2010年8月27日金曜日

■ソーシャルエナジー株式会社 インタビュー


■社会貢献したいニーズがある。それを満たしたい

小田原線経堂駅を降りて、のんびりとした雰囲気の商店街を少し歩いたところに、明るいガラス張りのフリースペースカフェがある。

私達が訪れた時は、壁一面が立松和平氏のカンボジアの写真で埋め尽くされており、丁度近日開催されるイベントの準備中だった。

今週はカンボジア、その次は環境経営セミナー、そのさらに次にはソーシャルメディア活用法と、ここでは次々に様々なテーマのイベントが開かれ、学生から社会人まで様々なバックグラウンドの人々が集まる。

こだわりの食材を用いた料理が提供される。美味しい食事と興味関心のあるテーマを囲んで、夢やビジョンを持った人が、出会い・つながる空間。ソーシャルエナジーカフェだ。

「ソーシャルな出会い系、なんて呼んだりもするんですよ」

ソーシャルエナジー株式会社・代表の木村知昭氏は、インタビューで初めてカフェを訪れた私たちに楽しそうに教えてくれた。そして、「自分は社会起業家と呼ぶには少し違うと思う。ただみんなが集まるプラットフォームとしての場所をつくっただけ」と気さくに笑った。

「平成二十年度の国民生活白書を見ると、社会貢献をしたいと思っている日本人が全体の69.2%に上る。この数値は上がり続けており、調査を始めてからは最大となっている。でも、そのうち実際に社会貢献をしている人は、たった1,2割」

13000万人の人口のうち、約9000万人の日本人が、社会貢献をしたいと思っている。ただし、その中で実際に社会貢献ができているのはたったの1,2割程度で、残りの約8000万人は、「なにか社会に役立つことをしたい」と思いながらもそのやり方がわからず、何もしないままで終わっている。

つまり、普通に働くだけでは社会貢献を実感できず、もっと何かできないかと考えている8000万人のポテンシャルを活かすべく立ち上げられたのが、ソーシャルエナジー株式会社なのだ。

仕事や家庭で忙しく時間やお金の制約がつきまとう人であっても、社会貢献をどのようにすればいいかまったくわからない人であっても、少しでも社会参加したいという思いがあればそれを形にして実現することのできるハブあるいはインフラとしての存在を目指している。ニーズがあるなら、それを満たしたい、ただただ満たしたいと、単純にそう思って」

できないことや苦手なことは他の人と協力して補い合えば、新たな可能性が開ける。そのように、小さな一つ一つの個人の力を、集めてつなげて、大きな社会の力にできる。

■イベントカフェの運営と、福祉授産施設の製品を売るネット通販

木村氏は、ワタミにて勤務し、同社の特定非営利法人School Aid Japanの監査や、CSR調査を行っていた。会社を辞め、株式会社ソーシャルエナジーを設立したのは、2009年11月のことだ。

8000万人のポテンシャルを活かすための方法として、ソーシャルエナジーは二つの主要な事業を作った。

一つめは、フリースペースカフェ「ソーシャルエナジーカフェ」の運営。

ここでは、講演イベントやセミナーが開かれ、誰でも自由に参加することができる。イベントの内容は、環境経営やソーシャルメディア活用経営論、起業やまちづくり勉強会、カンボジア交流会など多岐にわたる。

テーマごとにイベントを開催し参加を募ることで、同じ興味関心の下に、まだその分野に興味を持ち始めたばかりの学生や、NPO活動をしている大人や、何かスキルを活かしたいと考えている社会人など、様々なバックグラウンドの人々が集まる。

同じあるいは近いビジョンを持つ人たちを集めてつなげ、次のアクションを生み出すきっかけを生み出すのが、イベント開催の狙いだ。

もう一つは、「美味しい社会貢献プロジェクト」。

これは、福祉授産施設で作られた商品や地産地消をテーマにした食材を推進するもので、商品を購入し空腹を満たすだけで障害者や地域への社会貢献になるという仕組みだ。

前述のカフェにおいて来客やイベント参加者に提供される他、ウェブサイト上のネットショップによっても全国に販売されている。

ポイントは、食材が美味しく本当に厳選された質の高いものである点と、生産者の声やエピソードがスタッフを通じて届けられ、購入者が少し特別な食体験ができる点である。そこに付加価値が生まれ、多少値段が高くても買い手は満足して購入してくれるのだ。これが会社の運営を支える収益になる。

とはいえ、ソーシャルエナジーの事業はまだ始まったばかりだ。

まだ立ち上げて半年ながら、カフェは売上を伸ばしつつあり、ネットショップも粗利20%を確保しているが、まだまだ拡大途中である。

講演イベントも現在より高い頻度で開催したり、多くの人々にもっと企画を持ち込んでもらうことで新たな参加者やより多くのリピーターを獲得し、盛り上げていくことを目指している。

現在の目標は、同じコンセプトの店を毎年一店舗ずつ増やしていくこと。

ただし、これは代表や中心メンバーがやるのではなく、別の地域で別の人間にやってもらうことを意図している。既に今年11月には神奈川県でのオープンが決定している。

社会貢献の循環の輪の中に気軽に参加を

まずは新たな参加者や、リピーター、そして講演・イベントの持ち込み企画を増やすことで活動を安定させるために重要なツールとなっているのは、ツイッターだという。

カフェの備品や機材を集めたのも、ツイッターでのつぶやきだった。

「私たちの活動に一緒に関わりませんか」というカジュアルなスタンスに、プロジェクター、音響機材、エスプレッソメーカー、食器棚、ホワイトボードなど七十点以上、金額にして百万円相当以上が集まり、資金をかけずに必要なものをほぼすべて賄うことができた。

「今、顧客と近いところで濃い仕事ができていること、やりたい仕事が自由にできていることにとても満足している。父として娘に『お父さんはこんなことしたんだよ』と誇りを持って具体的に言うことが、大企業では難しかったかもしれないが、今の仕事ではできそう」

と、木村氏はうれしそうに笑った。

今後目指していくものを尋ねると、こんな答えが返ってきた。

イベントへの参加や商品の購入、そして講演会の企画の積極的な持ち込みによって、もっともっとこのプラットフォームとしてのカフェを盛り上げてもらうこと。金銭的寄付よりも、社会貢献の循環の輪の中に気軽に参加する人々が増えること。その一つ一つが小さくても、継続することが理想。

別の地域で真似する人が増えればいい。そうなればうちの会社がなくなってもいい。このような場がなくても人の出会いとアクションの循環が回っていくような社会になればいい」

つまり、目的ありきで、その手段としてあるのが、ソーシャルエナジーなのだ。

文責:山下ちひろ

取材:岩井純一、山下ちひろ(2010年8月24日)

※この原稿は、20109月末時点のものです。

最新情報は、下記の公式サイトでご確認ください。

http://www.socialenergy.co.jp/index.html

※社会起業支援サミット2010 in TOKYOは、2010103日開催。

ご予約・お問い合わせは、下記ブログ記事へ。

http://ccc-action.blogspot.com/2010/09/2010-in-tokyo_11.html

予約時に上記へのリンクをtweetされた方には、サミット出演の社会起業家インタビューをまとめたPDFデータをメールで後日、送ります(下記は短縮URL)。

http://ben7.jp/aace

※なお、この記事へのリンクは自由です。

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