2010年8月25日水曜日

■NPO法人 Check インタビュー


■使えるトイレの位置情報がないために外出できない人がいる

トイレは健常者や若者にとって当たり前に使えるものと認知されているが、障がい者、お年寄りなどにとって使いやすいトイレは少ない。

また、こうした人たちのためのトイレである「多機能トイレ」がどこにあるかわからないために、外出を控えたり、我慢を強いられている人たちが少なからずいる。

そこで、全国の多機能トイレマップを制作し、Webサイト「Check A Toilet」を運営しているのが特定非営利法人(NPO)Checkである。

「誰もが普通に生活したり、外出できるようにしたい」と語るのは、この団体の設立者であり、代表理事でもある金子健二氏だ。

金子氏は、大学卒業後、旅行会社に就職。介護付きツアーの担当になり、そこで障がい者、お年寄りにとって多機能トイレがいかに大事であるかを学んだ。

ツアーを成立させるために、旅先のどこにトイレがあるのかについて情報を集めるが、そんな情報は旅行会社にもほとんどなかった

高齢者・障害者・子育て中の親にとって、多機能トイレは必要不可欠だ。だが、多機能トイレがどこにあるかわらないのでは、出かけたくても出かけられない。

そんな現状を見かねた金子氏は、「トイレ情報を集めて、誰でもどこにいてもトイレ情報を調べられれば楽しく自由に出かけられる」と漠然と考えた。2003年頃の話である。

トイレ情報のデータベースを作るという思いを強くした金子氏は、システム会社へ転職。インターネット業界やシステムについてはまったくの素人にもかかわらず、独力でトイレサイトマップを立ち上げようと考えていた。

そんな金子氏を後押しするように、状況は好転していった。

mixiに代表されるSNSの広がり、Googleマップの登場である。

また、「何よりも近年のiPhoneの広がりが大きかった」と金子氏は語る。これにより「Check a toilet」へのアクセスが大幅に拡大したそうだ。

その後、会社を離れ、夜にコールセンターの仕事をしながらプロジェクト立ち上げに向けて進んでいく。

■ユニバーサル・トイレのソーシャルマップを作ろう!

そして、2007年6月。

金子氏は、多機能トイレマップ「Check A Toilet」のサイトをオープンさせる。

「みんなが作るみんなのためのトイレマップ」として個人・地域・NPO・ボランティア団体による口コミ情報によってマップ上でトイレの設備情報を共有していくものだ。

この「Check A Toilet」の情報源は、一般の人たちによる口コミである。

外出先で多機能トイレを見つけた人たちが、WebサイトやiPhoneから情報を登録している。この誰もが気軽にいつでもどこでも参加出来る仕組みが売りで、自治体、事業者とも協力してトイレ情報を提供してもらい、情報の管理もしている。

一方、Checkでは「アフター5チェック」という社会貢献イベントも企画している。

これは、企業と協力して社員から任意の参加者を募集し、仕事が終わった後にそれぞれにiPhoneを配布して会社周辺の多機能トイレをチェック、登録してもらうというもの。

この「アフター5チェック」は、企業にとってもCSR活動の一環になることもあり、大企業を始め、多くの企業を対象に全国で実施していく予定だ。

このように、多くの人、企業を巻き込みながらCheckの事業は展開されている。

金子氏が株式会社ではなくNPOを選択したのは、「NPOのほうが協力を得やすく、自治体と協働していけるし、中立の立場で事業を進めていくため」と言う。

しかし、従来のNPOが自治体や企業からの助成金を受け取って事業活動をするのに反して、Checkでは助成金を一切受け取っていないという。

日本のNPOで助成金をまったく取らずにやっていくのは容易ではない。

そこで、Checkではトイレの情報等をグーグルなどの地図を扱う会社に提供していくという契約を結ぶことで契約料を得たり、金子氏が企業などで行う講演会の講演料などで自給自足のシステムを作り上げている。

だからといって、運営は楽ではない。資金は足りていない。

それでも、金子氏の地道な努力、周りからの協力もあり現在、登録トイレ数は3万1千件になった。

金子氏はここまで事業を行ってきた中で「情報が集まらない、資金が底をつく、休みなく働き続けたりと今までやってきたことの8,9割は大変なことだった」と語りながらも、「他の人にやられるぐらいなら自分でやりたい。あきらめるより前に進むしかないという思いでやってきた」と言う。

■日本全国10万件のトイレマップをみんなで作ろう!

金子氏は市民に対し、「トイレのことで外出できない人がいることを知ってほしい。出先や外にいる時にトイレを見つけたらそれを少しの時間を割いて『Check A Toilet』に登録してほしい」と言う。

それが多くの人たちの助けになるから、と。

この「Check A Toilet」を通して、多機能トイレの情報を提供していくだけでなく、社会全体を変えていこうとしている。

それは、現状に甘んじている多くの店や施設の意識を変えることであり、今後増えていく団塊の世代にトイレ情報を提供することで外出を促し、お金を落とさせて経済を活性化させていくなどである。

まずは日本全国に10万件あるといわれている多機能トイレの登録を行い、すべての人が日本全国どこにいても多機能トイレの情報を手に入れることが出来るようにする。その後は、海外にも進出しようと考えている。

金子氏の夢は、世界中を網羅したユニバーサルトイレマップを作ることである。

「まずはアメリカなど社会基盤がしっかりとしている国から進めていきたい」と語る。

この海外進出は、「海外に住みたい」という金子氏自身の夢とともにある。

自分も楽しみながら社会の役に立つことを行っているからこそ、金子氏はこんなにも生き生きとしているのだと思う。

「誰もが楽しく自由に好きなところに行けるように」という金子氏の思いは、日本を飛び出して海外まで広がっていくだろう。

文責・岩井 純一


※この原稿は、20109月末時点のものです。

NPO法人 Checkの最新情報は、下記の公式サイトでご確認ください。

http://www.check.or.jp/

※社会起業支援サミット2010 in TOKYOは、2010103日開催。

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